The Climb 〜 頂上を目指して 〜
「10億ドルの会社を築き上げる方法」

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「10億ドル規模のビジネスを築き上げるには、どうすればいいか」

私がこのような質問を受けることが多いのは、おそらくその経歴からでしょう。Salesforce.comの初代CMOとして、私は、一部屋に社員10人という状態から、ランレート10億ドルの規模にまで、この会社を築き上げました。ZuoraのCEOとしては、Cheng Zou、K.V. Raoという2人の仲間とともに会社を立ち上げました。そして、(まだ)10億には達していませんが、これまで何とか2億5,000万ドルを調達し、従業員数が800人を超えるまで成長を遂げています。今のところは順調です。

その過程で得たあらゆる教訓から(本当に多くの教訓が得られました)、最近ではこの質問を受けたときに、気がつくと、勝手ながらマイリー・サイラスの「The Climb」の詩を振り返っています。

多くの人は、成功は直線的な道のりだと思っています。成功について考えるとき、最終結果を見ています。成果に飛び付き、その途中で必ず起きる、退屈で困難な事柄は無視します。しかし、成功までの道のりは真っすぐではありません。成功は、紆余曲折の連続、解決しなければならない困難の連続をくぐり抜けて達成されるもので、巧みな一手だけで達成されるものではありません。

これと同じように、10億ドルまでの道のりも一本道ではなく、旅の連続です。 私が言いたいのは、「10億ドルビジネスの構築と登山はよく似ている」ということです。エル・キャピタンのフリークライミングに成功した2人の猛者とは違い、たいていの人は山を登るのに約900メートルもの硬い岩盤を真っすぐ上ることはしません。そうではなく、多くのスイッチバックがあるルートに沿って進みます

私がスイッチバックという例えが好きなのは、曲がり角があるたびに「回れ右」をして完全に向きを変えるからです。これと同じように、ある会社が新しいフェーズに入るとき、実質的には新しい組織になります。前の段階で成功の要因となったものが、次の段階では足かせになることもあります。ルールを投げ捨て、白紙の状態にして、会社を設計し直す必要があります。

私は多くの会社とやり取りするうちに、100万ドル、300万ドル、1,000万ドル、3,000万ドルというように、「1」と「3」を使って成長段階を区切ると便利なことがわかりました。Software as a Serviceを提供する会社にとって、これらの数字が表すのはARR、すなわちアニュアル・リカーリング・レベニューです。これらの数字は、一呼吸置いて「これまでは順調だ、しかし次の一歩にはどう取り組もうか」と問いかける良い区切りになります。では、この10億ドルまでの道のりを定めるフェーズはどのようなもので、各フェーズで取り組む必要のあることは何でしょうか。以下、1つずつ見ていきましょう。

Forrester Wave™: Recurring Customer And Billing Management, Q3 2017

The report evaluated 9 vendors across 35 criteria. We are proud to announce Zuora was cited as a leader having the highest score for both Current Offering and Strategy.

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アイデアの証明(0~100万ドル)

会社を立ち上げて最初にすべきことは、アイデアの証明です。これこそが第1段階です。正しいアイデアを持っていれば、一般的には、100万ドル、あるいは初期の一連の顧客獲得に到達できます。昨今では、その目的で「シードラウンド」の資金調達に動くことができます。ただし、アイデアの証明のためだけに、会社全体を「Aラウンド」に賭けることはやめてください。

Zuoraの場合、次のようなアイデアがありました。―Salesforceのような、サブスクリプションモデルに基づいて運用している会社が存在し、それらの会社はおそらく自社専用のビリングシステムを構築している。なぜなら、通信会社向けのビリングシステムは価格が高すぎる。一般的なERPシステムでは必要な処理ができない。しかし、そのようなシステムを自社で構築しなければならない状況は望ましくなく、購入できるものであるべきだ―これが私たちのアイデアでした。

というわけで、「外に出てみよう」ということになりました。外に出て、多くの会社を探して(ほぼすでに知っている会社でしたが)、このアイデアを証明してみよう、と。そのため、プロトタイプを作成しました。50社を超える見込み顧客と話をしました。そして実際に、製品が完成する前に数件の販売契約を結びました(もちろん、契約の履行は製品の納品を条件として)。

Salesforceでも同じように、Webサイトにスクリーンショットを一部公開して、ユーザーにベータ版への参加を招待しました。次に、関心を示したすべての人に呼びかけ、デモを見てもらい、どう思うかを聞きました。2000年2月のサービス開始時には、200社の顧客が集まっていました。

完全版の製品がないままでも、アイデアを販売することができます。それでまったく問題ないのですが、ARR 100万ドルが迫る頃までには、そのアイデアが証明されている必要があります。

製品の証明(100万~300万ドル)

100万ドルに到達したら、「アイデアは受け入れられた。今後はお金を支払ってくれる」と思ってよいでしょう。しかし、顧客は実際何にお金を払ったのでしょうか。前のフェーズでは、あなたはおそらく広範なアイデアを試して、どのアイデアが心に残るかを確認したことでしょう。 しかし、今は進路を変えるべきときです。焦点を絞って、何らかの構築を行うべきときなのです。

本当に構築する必要のある製品は何でしょうか。アイデアの証明のときには、ありとあらゆるアイデアを試したのでしょうが、今は選抜し、優先順位を付け、最初に構築する必要があるもの、および今後に後回しできるものについてじっくりと考えます。

この逆のプロセスもありえます。Zuoraでは当初、単純なビリングシステムで十分だと考えていました。しかしその後、顧客がもっと多くの機能を必要としていて、API、決済システム、コマースプラットフォーム、税金計算のエンジンを追加する必要があることがわかりました。このフェーズで、非常に多機能な製品が必要だということが判明したのです。

さて、製品の証明と言っても、全体を「完成」させる必要はありません。しかし、市場で勝つための十分な知見を得て、今後の数四半期、あるいは数年にわたるエンジニアリング工程を動かすための一貫した製品ロードマップを用意する必要があります。

まさに学びのフェーズです。そして、300万ドル市場に近づき次のフェーズが始まる頃までに、その探索のすべてを完了しなければなりません。その頃までには、製品を抜本的に設計し直す時間がなくなり、規模の拡大が目標になります。

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市場の証明(300万~1,000万ドル)

300万ドルから1,000万ドルへのスケールアップは刺激に満ちています。アイデアの証明がうまくいった場合、この段階では、顧客の心に響くような確かなロードマップがあります。そのため、300万ドルから1,000万ドルへの道のりは、できるだけ早く進もうとするでしょう。多くの営業担当者を雇い、マーケティングに資金を投じ、技術者はロードマップの遂行に焦点を絞ります。わずか1年足らずで、300万ドルから1,000万ドルまで成長する企業もあります。

しかし、規模の拡大以外にもすべきことがあります。それは、市場の定義を始めることです。その理由を説明しましょう。

選択した市場は、本当に数十億ドル市場でしょうか。5億ドル、あるいは1億ドル市場ではないでしょうか。調達資金を増やして次のラウンドに進むには、この答えを用意しておく必要があります。「シードラウンド」や「Aラウンド」の資金の調達時には、夢や希望だけがそこにありました。しかし、現実的なビジネスとなった時点で、投資家はその市場の大きさに注目するようになります。

5億ドル市場でもかまわないのですが、その場合、調達できる金額とExitの戦略の両方が、その市場の最終的な規模によって変わります。市場の証明のためには、魅力的なストーリーと大量の統計資料を用意しなければなりません。

私たちがZuoraを始めた頃の一般的な受け止め方は、「確かに、このビリングというものは面白そうだけども、他のSaaS企業しか利用しないよね」というものでした。私たちはSalesforceおよびWebExの出身であったため、ZuoraがSaaS業界向けの専用製品であると思われたのも無理はありません。

しかし、私たちはこう伝えました。「いいえ、私たちのビジョンはもっと広大です。あらゆる会社がZuoraのソリューションを利用できるので、市場は数十億ドル規模になると考えています」 それから、私たちは証拠集めに着手しました。メディア企業と契約を結ぼう、金融サービス会社と契約を結ぼう、ヘルスケア会社と契約を結ぼう、公益法人と契約を結ぼう、と。これが本当に数十億ドル市場であるということを証明するために。

この市場の大きさという点は、多くの会社が見落としています。『キャズム』という書籍で説明されている有名な「ボーリング レーン」戦略を採用して、焦点を絞るべき1つの垂直市場を選んでいます。到達地点は1,000万ドルであると想定しています。1つの同質な顧客の集合に絞り込む方が簡単だからです。このような姿勢も正しいのでしょう。しかし、最終的には小さい市場に閉じこもることになります。

ビジネスモデルの証明(1,000万~3,000万ドル)

ここまでよく頑張りました。1,000万ドルの通過点に到達したか、目前に迫っています。1,000万ドルまで行けば、会社が生き残る可能性が高まります。それまでは、いつ何時倒産してもおかしくなく、追加資金を調達する前にキャッシュを使い果たすこともありました。しかし、1,000万ドルで、特に、途切れることのないリカーリングレベニュー(継続収益)を確立しているのなら、廃業に至る必要はありません。真の会社になろうとしています。

では、次のステップは何でしょうか。1,000万ドルから3,000万ドルの間では、ビジネスモデルに焦点を絞り始める必要があります。

顧客獲得にかかるコストはいくらでしょうか。解約率や、目的のために実際にR&Dにかかる費用、顧客生涯価値、粗利益はどうでしょうか。正味顧客維持額(Net Dollar Retention)は黒字でしょうか。コホート(集団)を個別に見た場合に、それぞれのトレンドは良くなっているでしょうか。

現在、一部の会社は、この取り組みをあまりにも早く行っています。「CAC/LTV」などのビジネスモデルのメトリクス(評価指標)を注視する必要性について書かれたブログをお読みになるでしょう。私は、これらのメトリクスを無視しろと言っているわけではありません。しかし、1,000万ドルというやや小規模のビジネスモデルのコストは小さいのですから、会社を成長させるには、製品と市場の証明を行い、十分な資金を調達することの方が重要です。

しかし、採算のとれないビジネスを築いてきた場合(これはアイデアおよび製品の段階では十分にありえることですが)、3,000万ドルのランレートまで来ると、その事実を認めたくなくなります。その後は赤字が増え続けるばかりだからです。 また、3,000万ドルに到達する頃には、さまざまなしがらみができ始め、ますます動きづらくなります。

だからこそ、1,000万ドルから3,000万ドルの間に、しばしば厳しい選択が必要になります。優れた販売モデルはあるでしょうか。ない場合は、販売チームを入れ替える必要があります。利益の出ない顧客を追い求めていませんか。その場合は、利益が出るようにするか、その収益中毒から抜け出す必要があります。今の価格ポイントで高い粗利益のビジネスを築くことができるでしょうか。できない場合、顧客あたりの収益を増やすにはどうすればいいでしょうか。

300万ドルから1,000万ドルまでは、可能性のあるものを全部を追い求めがちです。そのような行動は、1,000万ドルから3,000万ドルまでの間では大きな問題になり、このフェーズの会社がよく行き詰まる主な原因の1つとなっています。

 

ビジョンの証明(3,000万~1億ドル)

3,000万ドルの通過点に到達した場合、すでにアイデアを証明し、製品を販売し、大規模な市場で事業を行なっていることを明示し、規模拡大とともに良さが増す優れたビジネスモデルを構築したことになります。ここまで来れば、本当に面白くなります。次の目印は1億ドル。大きな数字ですね。

1億ドルになると、面白いことをするためのリソースがやっと手に入ります。1億ドルになると、自社の周りにエコシステムができ始めます。1億ドルになると、銀行員が訪れ、株式公開をする時期だと提案してくるようになります。

では、この時期には何に焦点を絞る必要があるでしょうか。

まず注意すべきことは、3,000万ドルから1億ドルまでの間に、組織がこれまでにないようなリーダーシップの問題に直面する規模になるだろうということです。3層の組織から4層の組織へと移り変わり、さらに5層の組織へと向かいます。これらの変化は、場合によっては組織に痛みをもたらします。この話題については別の機会に取り上げます。

この時点で始めなければならないもう1つのことが、「ビジョンの証明」です。これはどういう意味でしょうか。株式公開をする場合、あるいはさらに多くの資金を調達する場合に、新しい投資家は、あなたの会社が安全な投資先であり、長期的に生き残る会社であると確信する必要があります。

新しい投資家はベンチャー投資家ではありません。ベンチャー投資家は、ポートフォリオゲームを楽しんでおり、賭けの1つが大当たりすればよく、いくつかの賭けには負けるということも想定しています。しかし、新しい投資家はリスクを最小限に抑えたいと思っています。優れたマネジメントチームが存在すること、優れた取締役会が存在すること、予測可能な業務遂行を行っていること、そしてフリーキャッシュフローがあるか、少なくともキャッシュフローが黒字となるビジネスを行うための明確な道筋があること。これらを確信したいのです。

その確信が、マイナス面へのプロテクションとなります。また、投資家は次のことも確認する必要があります。あなたが話しているこの巨大市場が実在し、会社がその市場で本当にトップの位置を占めていて、持続可能な競争優位を得るだけの優れた製品、人、パートナーがいるということを。つまり、新しい投資家は、そのビジョンを本当に信頼できる必要があります。

この時期は、何度もストーリーを伝え、そのストーリーに常に修正を加えて完成させていく必要があります(Zuoraの前回の資金調達ラウンドでは、CFOのTyler Sloatが電話で1日に6回も同じ話をしたものです)。また、より大きな製品ポートフォリオを描き出して、隣接する市場についての自社の位置付けを明確化する必要もあります。

前のフェーズまでは、ビジョンが少しぼやけていてもよく、ハラハラしながら信じ込むものでした。しかしこのフェーズでは、ビジョンの焦点を合わせる必要があり、ビジョンが鮮明になる必要があります。

Strategies for Success

Insights on the Subscription Economy from The Economist, Wall Street, and other industry experts.

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業界の証明(1億~3億ドル)

さあ、1億ドルまで来ました。良い響きだと思いませんか。1億ドルに到達したというのは気分がいいものです。自分の会社が真に地に足をつけ、成長してきたということですから。では、今焦点を絞るべきことは何でしょうか。

多くの会社が「プラットフォーム」になることについて語っています。常にそれに関する記事を目にされることでしょう。Microsoftは「プラットフォーム」を構築したから成功しました。Uberは配車サービスではなく、移動のための「プラットフォーム」となりました。Salesforceは単なるCRMツールでしたが、Force.comという「プラットフォーム」を構築してからは、Amazonのようなメジャーなクラウド提供企業になりました。プラットフォームは魅力的です。

しかし、あまりにも多くの会社があまりにも早く、プラットフォームになるということに着目しています。1億ドルに到達するまでは、プラットフォームになるほどの十分なクリティカルマス(最小必要数)を獲得していません。しかし、1億ドルになれば、小さい企業が自社を取り巻き始めます。まるで、惑星が太陽を取り囲むかのように。あなたの会社の顧客ベースを求め、マーケティングを求め、豊富な営業担当者を求め、それらを活用して販売できる範囲を広めたいと切望しています。

だからこそ、1億ドルから3億ドルまでの間に、エコシステムを構築する意味について、しっかりと考え始めるべきです。これまでの成功を重力として活用し、他の会社をこの軌道へと引き込むための方法を考え始めるべきです。一夜にして答えが出るものではありませんが、3億ドルに到達する頃までには、業界を生み出した存在であるという観点から自社について語り、拡大し続ける業界の中心として、業界とともに成長していく方法を説明できるようになる必要があります。

数十億ドル規模のエコシステムを主導するプラットフォームをどのように構築しているのかを見せることで、自社が10億ドルビジネスになる根拠を示すことができます。Salesforceが株式公開をした頃、セールスフォースオートメーション(SFA)は10億ドル、よくても20億ドルの市場でした。SalesforceはOracleやSAPによる買収の餌になると見られていたのです。しかし、Force、AppExchangeと立て続けにサービスを開始すると、皆が態度を変え、「10億ドルの収益に到達できる会社になったね」と言いました。投資家とはそんなものです。

結論

10億ドルのビジネスを築き上げることが困難を極めることは明白です。ほとんどの会社が成功していません。しかし、長い旅を一歩一歩に分けることで、このプロセス全体の不可解さ、恐ろしさがかなり和らぎます。

ただ、それぞれの一歩が異なること、そして新しく一歩を踏み出すごとに、会社の目標も、今証明しようとしていることも変わるということを認識する必要があります。

最後に、前の一歩で成功の要因となったものが、今の一歩では足かせになる場合もあると自覚する必要があります。聖域に固執せず、変化を受け入れなければなりません。 ジョン・ロックフェラーは、「『偉大なもの』のために『良いもの』を諦めることを恐れてはいけない」という明言を残しています。曲がり角をぐるっと曲がるときに初めて、その意味がわかってくるはずです。
“Don’t be afraid to give up the Good to go for the Great.”

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