成功するすべてのSaaSビジネスモデルに隠されている方程式

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SaaSに対するCFOの期待値

サブスクリプションエコノミーはすでに定着しており、CFOが適応する必要のあるものです。
Zuora社CFO、Tyler Sloat

簡単に言えば、SaaSの財務は別物です。SaaSビジネスモデルは、優先順位、懸念事項、メトリクス(評価指標)、レポートなどのあらゆる面で、従来の製品会社のビジネスモデルとは根本的に異なります。

筆者はサブスクリプションエコノミーを取り入れた企業のCFOとして、ビジネスにとって一番意味のあるメトリクスを一般会計原則では表現できないことを知っています。なぜなら、SaaS企業では以下のことが必要になるからです。

  • リカーリングレベニュー(継続収益)とまったく異なるやり方での、1回限りの収益の評価
  • 複数の時間的次元にわたるビジネスの測定(過去だけでなく将来も)
  • 月半ばでのサブスクリプションのキャンセル(控除や払い戻しが発生し、収益認識にも影響する可能性がある)など、下流のプロセスで混乱を招く恐れのある複雑な変更の管理

GAAP(一般会計原則)とnon-GAAP(非一般会計原則)

現行システムに苦戦している多くのSaaS企業のCFOと話をしてきました。
Zuora社CFO、Tyler Sloat

CFOやそのチームは、帳簿を締めるまでに長い時間がかかるため、辛い思いをしています。私の収益管理チームも、以前は他社と同様に、スプレッドシートの大量のデータに圧倒されていました。顧客ごとに1行入力し、収益のデータが多数の列に分散されていたのです。私の知る限りでは、監査役向け、運用向けの2つの一般会計原則台帳を仕方なく管理しているSaaS企業のCFOもいます。

経営側としてのCEOや取締役員は単なる貸借対照表と損益計算書にはないような洞察を求めています。つまり、ARR、解約、ACVといった先進的なメトリクスへの洞察を必要としています。

Zuoraでは、自社の成功について説明するために、ますます一般会計原則によらない簿外の数値を利用せざるを得なくなっています。さらに、これらのリカーリングレベニューモデルへの注目度は高まっているものの、ウォールストリートの投資家の多くは、サブスクリプション・ビジネスモデルを完全に理解しておらず、サブスクリプションビジネスを正しく評価できないこともよくあります。

私の経験をもとに、皆さんには正しく仕事を進めていただきたいと思います。

CFO向けの必須スライド

Zuora CFOのTyler Sloatが監督する、データに基づき、調査によって裏付けられたプレゼンテーション用スライド。Zuoraのビジネスモデルを詳しく洞察し、CFOたちがサブスクリプションエコノミーにおいて、新しい収益の基準にどのように備えているかを解説します。

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新モデル、新方程式:すべてのSaaSビジネスに隠されている方程式

リカーリングレベニュー関連のビジネスモデルによって、財務の予測可能性が向上し、顧客の特徴についてより深く洞察でき、進化し続ける顧客のニーズに適応するための高い柔軟性が得られます。アップセル、クロスセル、アップグレードがまったく新しい収入源になります。
Zuora社CFO、Tyler Sloat

SaaS企業では、長期的なリレーションシップを生み出す革新的サービスの提供を中心としたビジネス戦略を練る必要があります。サブスクリプションエコノミーとは、単一、個別の売上を扱うことではなく、予測のしやすいリカーリングレベニューのためにリレーションシップを収益化して、なおかつ維持することです。

以下、すべてのSaaSビジネスに隠されている方程式について説明します。

Subscription Finance: here is the basic equation behind all subscription-based businesses.

 

ARR

アニュアル・リカーリング・レベニュー(ARR)は、繰り返し発生することが見込まれる収益の額です。いたってシンプルですね。注意点として、1回限りの収益は含まれず、継続して発生する収益のみが算入されます。つまり、ARRは通常の収益とは異なります。収益は過去の数値であり、ARRは将来の数値です。ARRでは「リカーリング(継続)」という点が重視されます。

ここで問題になるのは、従来の財務諸表には過去の期間の収益のみが示され、将来のリカーリングレベニューの概念がないことです。しかし、SaaS企業にとってはARRがあるため、各会計年度を、その年の収益がどうなるのかを把握しつつ始めることができます。上の式では、これを期首ARRnと呼びます。

Churn(解約)

ごく単純な意味で、解約とは、更新を行わないサブスクライバーの数であり、多くは収益の単位で表されます。通常、ダウンセルもこの解約の数値に含まれます。

厳しい現実ですが、市場で最も優れたSaaSオファリングであっても、一部の顧客が離れていくことは避けられません。そのため、この方程式では、その年のARRから解約を差し引く必要があります。

ACV

年間契約価値(ACV)とは、新規顧客による購入、既存顧客によるアップグレード、または既存契約の更新から生じる新しい収益のことです。企業は新しい収益を増やすために販売とマーケティングに投資します。最終的にARRの増加につながるからです。誰もがそれを目指しています。

これらのメトリクスを合算することで、SaaSビジネスの完全な財務状況がわかるだけでなく、次年度のリカーリングレベニュー、つまり期末ARRも算出されます。

 

ERPがSaaSビジネスで役に立たないところ

サブスクリプションビジネスのメトリクスをトラッキングすることに関して言えば、従来のシステムではその全体像を把握することができません。
Totango社カスタマーサクセスマネージャー、Mike Walker氏

これで、SaaSの根底にあるサブスクリプション・ビジネスモデル「ARRn – Churn + ACV = ARRn+1」について理解できました。しかし、リレーションシップの強化と収益化をベースとする新しいモデルを、今あるERP財務システムでどのようにサポートできるのでしょうか。

リカーリングレベニューの追跡は将来のためのプロセスです。サブスクリプションビジネスのメトリクスの追跡について言えば、従来のシステムではその全体像を把握することができません。

たしかに、予約、請求、現金、収益といった財務メトリクスは昔のコマースでも追跡されましたが、それらは過去を見るものであり、1回限りの取引に重点を置いていました。

以下、SaaSに適用したときのERPの限界について見ていきましょう。

SaaSのリレーションシップは契約されたリレーションシップであり、一夜限りのものではない

リカーリングレベニューは、契約された長期的な顧客とのリレーションシップから生み出されるものです。このリレーションシップでは、顧客とベンダーの双方が責任を担います。契約されたリレーションシップでは常に注意を要しますが、1回限りの購入は一時的で、取引ベースです。

そのため、企業は1回限りの収益とは異なるやり方で、リカーリングレベニューを把握できる必要があります。しかし、従来の財務システムでは、1回限りの取引と顧客との継続的なリレーションシップを区別する方法がわからないため、この2つをひとまとめにして、同じように扱う傾向にあります。

SaaSでは、リレーションシップは時間とともに進化する

人、顧客、ビジネス―普遍的なのは、変化するということだけです。成熟に向かい、環境が変化するうちに、ニーズや要望は絶えず変化します。リレーションシップも、顧客のニーズや要望に対応できるように進化する必要があります。

そのためには、価格設定とパッケージ化について、繰り返し変更できる必要があります。しかも、その変更を迅速に、顧客が離れる前に行う必要があります。しかし、それは財務チームにとって大きな負担となる可能性があります。価格やバンドルを調整するたびに複雑な処理が発生します。また、複数の期間が関わる場合の対応は本当に大変です。

実際、従来の財務システムでは、時間とともに変化する一連の取引情報をどう展開させればいいかわからないため、単純な負債や控除として扱うように制限されます。また、「システム」がスプレッドシートの場合、複数の時間的次元にわたって、予約、請求、現金、収益といったものの変更がビジネスにもたらす影響を無事追跡できることを祈るしかありません。

リレーションシップにおける意思決定が下流のプロセスに影響する

顧客がサブスクリプションを月半ばでキャンセルすると決めた場合、それがスイッチを切り替えるような簡単なことだとは思わないでください。このような複雑な変更は、下流のプロセスで混乱を招く恐れがあり、収益認識に直接影響を及ぼします。特に、顧客が大きな変更を行うたびに、それを手動で管理していれば、その影響は甚大です。

リレーションシップの変化にすぐに適応して、そのアカウントやビジネス全体への影響を自動的に計算できる必要があります。しかし、従来の財務システムの中心機能は、ソフトウェアサービスではなく、実体のある商品の追跡にとどまっています。従来の財務システムは強力なルールエンジンではありません。また、サブスクリプションの変更にリアルタイムに適応して、その変更の影響を受けるあらゆる予定を再計算できるほどスマートでもありません。

制限は誰にとっても苦痛である

やがて社内の全部門が従来の財務システムの制限による影響を感じるようになり、この苦痛はCFOのオフィスのはるか先まで広まります。

  • 会計チームは、月末締めの記帳を間に合わせるために苦労します。
  • 収益管理者は、スプレッドシートの大量のデータに圧倒されます。
  • CMOは、財務チームの負担が大きいことから、新しいパッケージ化や価格設定の導入ができません。
  • CEOは、金融市場向けに自社の成功についてなかなかうまく説明できません。
  • 最後に、CFOは、監査役向け、SaaSビジネスの運用向けの2つの一般会計原則台帳を管理せざるを得ません。

リレーションシップには新しいシステムが必要である

成功しているどのSaaSビジネスでも、その中心にあるのは顧客とのリレーションシップです。これらのリレーションシップを適切に管理するためには、新しいサブスクリプションエクスペリエンスと新しいカスタマージャーニーの提供を支援し、サブスクリプションの財務だけでなく、コマース、請求にもわたって統合的にアプローチできるシステムが必要です。

SaaSの継続的成功のための3つの重要戦略

リレーションシップの管理と収益化には、完全に固有のビジネスモデルが必要です。
Zuora社ファイナンスマネージャー、Carli Leary

以下、SaaS企業向けの重要戦略をまとめます。

戦略1:顧客価値を高める

成長を目指すすべての企業は、新しい顧客の獲得という目標を設定します。しかし、SaaSビジネスの場合、さらに、価値があり意味のあるリレーションシップを築いて顧客価値を高め、解約を最小限に抑えるために長期にわたってその顧客を維持しようと努めることにもなります。

顧客の価値を高めるための1つの戦略は、さまざまなエディションを提供する価格フレームワークを導入することです。そうすれば、顧客はニーズが増加したときに、上方のエディションへと簡単に移行することができます。

逆に、ニーズが減少した場合には、下方のエディションへと移行することもできます。この下方への移行シナリオは、ネガティブな響きがありますが、こう考えてください。その下方のエディションが選択肢として存在しなければ、顧客自体を失う危険性があります。しかし、価格の段階を1つ下に移動するだけであれば、顧客を維持できます。つまり、少なくとも収益の一部を継続できます。

戦略2:新しい経済のデータを分析する

従来の財務諸表は、製品の経済でのみ役に立ちます。なぜなら、従来の財務諸表は過去の数値であり、特定の期間における、すでに発生した収益の数値を固定したものだからです。一方、SaaSビジネスは、リカーリングレベニューを最大化するように自己調整し、そうすることで成長を促す必要があります。

リカーリングレベニューは、月間リカーリングレベニュー(MRR)、アニュアル・リカーリング・レベニュー(ARR)、あるいは四半期リカーリングレベニュー(QRR)と呼ばれることもあります。どれを選択するかにかかわらず、将来の収益(つまり、リカーリングレベニュー)に合わせて最適化するためには、今までとはまったく異なるメトリクス一式を確認する必要があります。

Churn(解約):ARRから解約率を差し引くことは、会社を存続させるために今年度新たなビジネスで生み出す必要がある最低限の収益を理解するために不可欠です。

継続利益率:単純にリカーリングレベニューと定期費用(売上原価のようなもの)の差です。このメトリクスの活用は不可欠です。なぜなら、定期費用が大きいほど、手元に残る金額は少なくなります。つまり、利益として計上するか、1回限りの成長費用として投資するかを選択できます。

成長効率:この比率は、ある特定の販売およびマーケティングへの投資によって企業が獲得した新しいリカーリングレベニューの金額を示します。言い換えると、販売とマーケティングに1ドルを投資した場合の、その1ドルによって獲得できたリカーリングレベニューの金額を表します。

戦略3:お客様とのリレーションシップを可視化する

従来の財務システム、すなわちERPは、サブスクリプション・ビジネスモデルを支えるように構築されていません。サブスクリプションビジネスのあらゆるシナリオを見れば、従来のシステムでSaaSビジネスを運用することは、丸い穴に四角のくいを打つようなものであることがわかります。従来のシステムの中心はSKUですが、今後はリレーションシップが中心となる必要があります。

成功するSaaSビジネスを確立するためには、顧客とのリレーションシップを最適化でき、市場ニーズに対応するために価格設定とパッケージ化を迅速に変更でき、リカーリングレベニュー、解約率、先進的なメトリクスを計算できるほどの柔軟性、スケーラビリティ、インテリジェンスを備えたシステムが必要です。

サブスクリプションモデルは費用対効果が高く、顧客にとって低リスクのモデルであるばかりか、サブスクリプションビジネスや投資家にとっても大きな可能性を秘めています。この機会を捉えて上記の戦略を活用することで、顧客との価値あるリレーションシップを構築、維持し、最終的には会社の成長を加速させましょう。

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