SaaSビジネスの成長戦略1:
「成長を促進する、ニーズに合った製品エディションの設計」

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これまでお伝えしたとおり、クラウド企業にとって、成長は成功を示す一番の指標です。急速に成長し、高い成長率を維持するために、SaaSビジネスは10の重要な成長戦略を採用する必要があります。ここでは、「成長戦略1:ニーズに合った製品エディション」について、Zendeskという最良の事例をもとに詳しく見ていきます。

多くのクラウド企業は、1つの製品を販売することから始めるでしょう。しかしながら、新機能が追加されるにつれ、すべてを単一の製品に詰め込むことは困難になります。

成長しながらも価格設定で顧客に敬遠されることを避けるためには、クラウド企業は複数の製品エディションを提供する必要があります。問題は、どのように最適な製品エディションを設計し、成長を推し進めることができるかです。

優れたクラウド企業は製品の機能を巧みにパッケージ化しているため、次のことを実現できます。

    • 各製品エディションがさまざまなセグメントの顧客ベースにアピール

また、

  • 各アドオン機能がさまざまな顧客のニーズに対応

クラウド企業は、幅広い潜在顧客ベースにアピールするために、ニーズに合った多数の製品エディションを、さまざまなプライスポイントで提供する必要があります。また、価格設定とパッケージ化によって、各製品エディションの価値を明確に伝える必要があります。各製品エディションは特定の顧客層に合わせて作成されているからです。

製品エディションとアドオン機能は、さまざまな顧客ベースから収益化する有効な手段です。

Zendeskの例:ニーズに合わせた製品エディション

Zendeskは、ニーズに合った製品エディションを試行し続けている良い例です。目的を持って熟慮して、さまざまな企業規模やニーズに合い、現在の自社の成長戦略にも沿ったプランを設計するために努力しています。

インターネットアーカイブのWayBack Machineを利用して、Zendeskの2010年から現在までの価格設定の変遷を追うことで、同社の成長や成長戦略が製品エディションにどのように反映され、製品エディションがそれらにどのように影響してきたかを見ていきましょう。

2010年の戦略:SMB市場での差別化の模索

Zendeskがこれを2010年に始めた理由は、この時期にZendeskが製品エディション(および価格設定とパッケージ化)の適切な構成がいかに重要であるかについて、厳しい教訓を得たからです。

Zendeskは、2010年5月の大幅な値上げによって批判を受けました。適正な価格でより多くの機能を提供する狙いがあると説明していましたが、この価格の改定はそのように受け止められませんでした。

コミュニティサポートやナレッジベースなどの新機能は目新しい製品オファリングとは見なされず、この値上げ(および年間プランを購入した顧客のみ価格を据え置いたこと)は不評でした。最大で300%も価格が上昇した顧客は、当然のことながら不満を持っていました。

Zendeskはこの顧客の騒動にすぐに対応し、すべての既存顧客の価格を据え置きました。また、製品エディションの設計により積極的に取り組み、有意義なエディションを作成するために顧客と意見交換し、今後リリースされるパッケージの価値についてより明確に示すようになりました。

2010年に提供した3つのプランを見ればわかるように、SMB市場が同社のターゲット市場でした。しかし、Zendeskは、オファリングを詳細化し、プラン同士の区別をつけ、さまざまなニーズを持つ潜在顧客にアピールすることはできていませんでした。

2011年の戦略:エンタープライズ市場への展開

2011年10月までに、Zendeskは追加の製品エディションを作成し、以下のように機能を明確に差別化することで、各プランの価値をはっきりと示しました。

パブリッククラウド企業とプライベートクラウド企業(年間収益が1,000万~5億ドル)に対する独自ベンチマークに基づいた、価格設定に関する最近のMcKinsey SaaSRadarレポートによれば、提供するプランの階層を増やすことで、価格設定と顧客の購入意欲がより整合しやすくなるということです。

その証拠に、価格情報を公表しているクラウド企業の約60%は3つ以下のプランの階層しか定義していませんが、4つ以上のプランの階層を定義している企業は、ARR成長率が25%高く、割引率も低くなっています。

Zendeskも、プランを追加することで、顧客のニーズにより合うように各プランを設定できています。

見てのとおり、Enterpriseエディションにまで展開している一方(これはエンタープライズ市場への進出という戦略の証しです)、Plus+プランを目立たせ、さらにそのプランの無料体験版にリンクすることで、SMBというターゲット顧客ベースについても明示しています。

2012〜13年の戦略:IPOに向け、できるだけ多くの市場を獲得

2012年10月までに、20,000以上の顧客企業を獲得したZendeskは、Starterプランを廃止し、3つのエディションに絞り込みました。また、企業像の説明と機能比較チャートを載せることで、見込み顧客がニーズに合う最適なプランを選択できるようにしました。やや値上げもされていますが、それほど大幅なものではありません。

IPOが目前に迫ったZendeskは、ターゲットを拡大してより多くの市場を獲得しようとしたようです。特定の企業タイプのみを対象としたソリューションという分類にはしませんでした。

見てのとおり、ターゲット顧客層に合わせたプランの定義を試みています。たとえば、Plusプランは「成長企業」向け、Enterpriseは「大規模組織またはサポートするブランドが複数ある企業向け」と記述されています。全体に対して1つのプランを売り込むのではなく、範囲を広げて、企業のタイプや規模に応じてソリューションがどのように機能するのかを説明しています。

2014年の戦略:低価格および高価格市場への進出、
エンタープライズ市場へのさらなる展開と案件規模の拡大

2014年の株式公開の際に、Zendeskはまたも製品エディションのオファリングを拡大し、Regularエディション、Plusエディション、Enterpriseエディションを挟むように、さらに下位のセルフサービスオプションと、さらに上位のプランを追加しました。

1ドルというStarterプランは、低価格市場に進出してロングテールを獲得している分かりやすい例です。

反対側にはEnterprise Eliteプランがあります。このプランは、SSL暗号化、KPIダッシュボード、Webベースのヘルプセンター、フィードバックタブ、複数のチケットフォームなど、実に59個もの機能を追加しています。

この新しい価格設定には、(2014年5月にTechCrunchの「Zendesk Gets Serious About the Enterprise」という記事で示されている)エンタープライズ市場をさらに獲得したいというZendeskの強い思いが明確に反映されています。

それまでは、ZendeskではSMB市場の顧客が多い傾向がありましたが、より大口の取引を目指し始めた結果、より大規模なエンタープライズ顧客を追求することを決めました。そして、その顧客ベース向けに特別に設計されたEnterprise Eliteプランを新たに作成することにより取り組みました。

2015年の戦略:SMB市場に再度フォーカス

1年後の2015年10月、60,000の顧客企業を抱え、Zendeskは同じ価格設定とパッケージ化を維持する一方で、明らかに中間のPlusプランを重視するようになりました。また、Enterpriseプランを営業マンによる販売モデルに移行しました(そのため、オンラインのセルフサービスでは、このプランを購入できなくなっています)。

Zendeskは株式公開企業として、すでにエンタープライズ市場を確立していました。しかし、この価格設定とパッケージ化からは、同社にとって最良の顧客はSMB市場であり、この市場を特別にターゲットとしたエディションを作成したということが分かります。

2017年の戦略:SMB市場を引き続き重視

2017年3月時点で、Zendeskは世界中の20万を超える組織に利用され、報告によれば2億880万USDの売り上げ、2020年までの収益目標は10億ドルであると公表しています。

Zendeskはついに、ターゲット顧客がわかりやすいように、プランの名前を説明的で意味のあるタイトル(例:「Regular」から「Team」)に変更しました。これらのエディション名は、各プランで想定している顧客像をより明確に示しており、この命名方法によって各プランはより魅力的なものになっています。

説明的な名前によって、顧客はなんとなく一番低価格のオプションを選択するのではなく(これは企業の最終収益の面でもカスタマーエクスペリエンスの面でも良いことではありません)、最適なプランを識別しやすくなっています。

また、中堅企業向けプランの価格を下げ、SMB市場にとってコスト面でより魅力的なものになっています。この価格設定には、SMB市場に対してより注力するという継続的な戦略が反映されているようです。

もちろん、Zendeskの製品エディションがこれで最終的に固定されているわけではなく(上記の価格は、この記事をお読みの時点ですでに変更されている可能性もあります)、価格設定やパッケージ化がこれ以上行われないわけでもありません。Zendeskは、他の成長途上のクラウド企業と同様に、製品エディションを戦略に対応付ける継続的な過程で、オファリングを動的に変えていく必要があることを認識しています。

要点

製品エディションとアドオン製品は時間とともに変えていく必要があるため、クラウド企業には以下が必要です。

  • 価格変更を行う際に、すべてのシステムと販売チャネル(オンライン、見積もりツールなど)で価格の更新が一括でできること
  • SKUを追加することなく、新たな製品、エディション、無料体験版などを追加できること
  • 価格設定とパッケージ化が迅速に行えること。それにより何度でも試行錯誤ができること

10の戦略の詳細については、無料のeBook『SaaSビジネスの10の重要な成長戦略』をダウンロードしてご覧ください。

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