SaaSビジネスの成長戦略3:クロスセルによる収益増加と顧客維持率向上

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SaaSビジネスの10の重要な成長戦略に関する詳細解説シリーズの第3弾です。SaaSビジネスの成長に不可欠な他の要素については、こちらの無料ガイドをダウンロードしてご覧いただけます。

クロスセル対アップセル

前回の成長戦略ガイドでは、「成長戦略2:戦略的アップセルパスの構築」というテーマを掘り下げました。アップセルとクロスセルは融合されることもありますが、これらは全く異なる成長戦略です。アップセルは、より機能が豊富(かつ高額)な製品エディションを既存の顧客に販売するための戦略です。一方、クロスセルは、(より包括的なソリューションを提供するために)既存の顧客に追加製品を販売するための戦略です。

クロスセルは、革新の起動力となります。クロスセルを行うことができるようになりたいと考えるクラウド企業は、継続的に革新し、新たな製品、機能、オファリングを追加することで、顧客を引きつけ、顧客にプランを追加してもらう必要があります。

この革新には大きな見返りがあります。成長段階後期(収益が2,500~7,500万ドル)のクラウド企業を対象としたMcKinsey & Company and Gainsightの最近のSaaSRadarレポートによれば、解約率の低いクラウド企業は、約3分の1の既存顧客に対して、複数製品のクロスセルを行っていました。

クロスセルと顧客維持

要点は極めて明確です。つまり、多彩なソリューションで多様な顧客の問題を解決できれば、顧客の維持率は向上します。

さらに、上記のレポートによれば、以下の理由で、クロスセルによって解約率を抑えることができます。

  • クロスセルが競争上の差別化要因として働き、製品オファリングの堅牢性がより低い他社よりも、より包括的なソリューションを提供できる。
  • 複数の部署に「コネ」ができる。さまざまな製品があることで組織全体でより多くのビジネス上の問題を解決できるため。
  • ユーザーからの信頼が増し、その結果オファリングの効力と定着率が向上する。

クロスセルを成功させるために、クラウド企業はサブスクライバーの財務、行動、ターゲット層に関するデータを研究する必要があります。使用パターン、サブスクライバーの好み、財務メトリクス(評価指標)を分析できることが、どのような種類のクロスセルの機会が収益増およびサブスクライバーの維持率向上につながるのかを明らかにするために重要です。

成長の事例:NEW RELIC

New Relic, 大手のデジタル・インテリジェンス企業であるNew Relicは、主にクロスセル戦略によって急成長したクラウド企業の良い例です。New Relicは、2012年~2015年の事業年度に収益を847%増加させ、2016年にDeloitteの2016年Technology Fast 500で最も急成長を遂げている北米企業の1社に選出されました。また、年間収益は前年から45%増の2億6,350万ドルでした。

New Relicは素晴らしい製品と、熱心な開発者が存在する膨大な開発者基盤で知られています。製品のボトムアップ式の採用によって、このファン層を確立し、維持率を推進しています。つまり、リーダーなどのトップ層に対する直接のマーケティングを重視するというよりも、開発者と直接つながることで、デプロイが容易なさまざまな製品や追加機能を提供して実際の弱点を解決しています。このアプローチは、他の多くのクラウド企業とは極めて異なり、New Relicにとっては非常に効果的なものでした。

New Relicの創始者兼CEOであるLew Cirne氏は、早くに成長できた要因の1つが、中核市場のオピニオンリーダーから製品について言及してもらったことだと公言しています。New Relicは早い段階からRailsコミュニティの中でトップの地位を確立したことで、一部の主要人物からの支持を得ることができました。Cirne氏は次のように述べています。「このような支持は待っていてももらえず、積極的に受けにいく必要があります。その驚くほど大きな影響力により、私たちは早くから牽引力を得られました」

このような評価やロイヤルティこそが、New Relicのボトムアップ式の成長を支え、新製品のクロスセル成功のためのプラットフォームをもたらしました。

New Relicは、成長を最適化するには、APM(アプリケーション・パフォーマンス管理)オファリングにとどまらず、それ以外の分野にも進出し、より包括的な製品一式を提供する必要があることを認識しています。Cirne氏は、「New Relicを、IT管理市場向けの「SalesforceのCRM」のようにしたい」と述べています。

New Relicはこれまで成長し続けています。同社のFQ4/15の収益報告によれば、新たなリカーリングレベニュー(継続収益)の20%は中核製品以外から得たものであり、顧客の約15%は複数の製品を購入しており、複数の製品を購入している顧客は400%以上増加しました。

さらに、2016年11月に発行された収益報告の中で、Cirne氏は次のように述べています。「第2四半期末の時点で、年間100万ドル以上を支出している顧客のベースは前年比100%以上の成長を果たしました。これは、IPOの時点と比較して10倍以上の増加率です。また、年間10万ドル以上を支出しているNew Relicの顧客数は、IPOの時点と比較して3倍近くまで増えています」新しいアドオン製品がこの好業績に大きく貢献しました。

同社のクロスセルによる成功のもう1つの要因は、特に請求の柔軟性に関する創造的な価格設定です。すべての製品が月次のサブスクリプションに対応しています。このように請求頻度を短縮することで、クロスセルが大幅に促進されます。開発者にとっては、わずかな料金を払ってアドオン製品を試すことができ、年間サブスクリプションへの多額の支払契約について上司から承認を得る必要がないため、より魅力的であるからです。

New Relicは、製品ラインを多様化させ、熱心な開発者基盤へのクロスセルに重点を置くことで、顧客あたりの利益を増加させ、ひいては収益全体を向上させていますが、それだけではありません。グローバルなIT管理ツール市場(Gartnerによれば、2013年に約180億ドル規模)のシェアを大きく獲得するための準備が整っています。

要点

効果的にクロスセルを行うため、クラウドビジネスには以下の能力が必要です。

  • 顧客の行動(製品で何を行っているか)と財務情報(何を購入しているか)を追跡することで、顧客のニーズを把握し、新たなアドオンの機会を見出す
  • 特定のアドオンオファリングで特定の顧客に注力するよう、販売チームを導く
  • 創造的な価格戦略(New Relicの例では、請求頻度の短縮)を提供することで、クロスセルを奨励する

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